わたしはアイドリッシュセブンのオタクなのですが、劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD(通称:ムビナナ)がありとあらゆる"アイドルオタク"に刺さると思うのでぜひ見てほしい…!というブログです。
もし「あ!元々興味あったんだよね…でもキャラも曲もよく分からないしな…」という人がいたら、もうこのブログここで切り上げて構わないので見に行ってください。どうかあなたの人生の90分をください。せっかく2023年6月に生命があるのですから、大画面のスクリーンと極上の音響を全身で浴びてみてほしいのです。刺さらないかもしれないけれど、こればっかりは"今"しかできない経験なので…!
一方、「タイトルくらいは聞いた事あるけど…」「どうせアイナナオタク向けの映画でしょ…」「ライブ映画だけ見てもなにも分からないよ…」という方もいるかと思います。そんなあなたのために、わたしなりにムビナナをプレゼンしてみます(ほぼネタバレなし)
劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiODとは
スマホアプリゲーム「アイドリッシュセブン」の初の劇場版作品。ゲーム内ストーリーの映画化ではなく、16人のアイドルたちが合同でライブをする様をライブビューイングしているような形態の映画です。わたしが思う特徴は、大きく3点。
①フル3DCG作品である
アイナナは過去にアニメにもなっておりますし(アニナナ)、声優さんたちがリアルライブを開催してくれたこともあります(ナナライ)。ですが、今回の作品は3DCG。こういう質感です。
ポイントは、彼らが平面空間の中ではなく、"わたしのいる世界"に実在するかのように思わせてくれるところです。モーションキャプチャからモデリングしたアイドルの素体が空間においてちゃんと質量を持つこともそうですし、ライブ演出も(莫大な予算は必要そうですが)現実の物理法則に則っており、"実現可能なライブ"になります。せっかくのフル3DCGなのでもっとムチャクチャな演出をやっても良かったかもしれません。でも、「アイナナのアイドルは1人の人間としてこの世界に実在するのだ」という説得力はこの90分でひしひしと感じられます。むしろ、そのための映画だったと思わされます。
これの何がいいかって、「わたしをアイドルに会わせてくれてありがとう」の気持ちでいっぱいになるんですよ。
ナナライの時も思いました。もちろん目の前にいるのはわたしの大好きなアイドル和泉一織くんではありません。声優の増田俊樹さんです。でも、見た目や所作に一織くんをインストールし、歌唱はもちろんダンスやファンサや衣装、その全てに「一織くんが実在したらこんな感じだろうなあ」と思わせる説得力がありました。
ナナライ『REUNION』二日間無事終わりました。今年も最高の夏をありがとうございます。IDOLiSH7はまだまだ先へ進みます。私達なら行ける、そう感じたライブでした。
— Toshiki Masuda / 増田 俊樹 (@ToshikiMasuda38) 2019年7月7日
最高の光景をありがとうございました。
去年のリベンジもできたぞ!
7に見える!よっしゃあ!おつかれ! pic.twitter.com/esNognHCMI
なのでわたしも、増田俊樹さんを一織くんに見立ててペンライトを振っていました。まるでイタコのよう…そしてありがたいことに増田俊樹さんは2.5出身だからか、このイタコ力(ぢから)がめちゃくちゃ高いのです。
アプリゲームのキャラクターである一織くん、わたしが普通に生活していたら液晶の外では決して姿を見ることのできなかったきみを、声優さんとスタッフさんとこれまでアイナナのことを好きでいた全てのマネージャー(=ファン)がわたしのいる世界に連れ出してくれたんだと思いました。もちろん100%の彼ではないですが、そもそもアイドルは虚像です。像の"成り手"と、観測者である"わたし"の間に結ばれる像こそがアイドル。ナナライの増田俊樹さんと、わたしとの間に"和泉一織"という像がちゃんと結ばれたことに何よりも感動しました。
でも、今回はそこに本人が"いる"んですよ!?!?
そりゃ見ているものはスクリーンです。ライビュですから。でも、もしわたしがチケット当選してたら会えてたじゃん!そう思わせるほどリアルに実在感を感じられるのです。MC中のクロストークや曲中のわちゃわちゃ、同じ振り付けでも身体の大きさによる微妙なズレや個性の出し方の違いが表現されているし、しかも絵ではなく3DCGなので、各キャラクターの身体の厚みや骨格の違いもよく分かります。 むしろ全員の動きを綺麗に揃えることの方が簡単だろうに、"人"であることの誤差をとても丁寧に拾い上げているんですよね。そして、リストバンドを互いに交換してるRe:vale、ステージいっぱいにぴょんぴょん跳ね回る環、自分のパート以外も口ずさんで、他パートを歌ってる人のことを嬉しそうに見る一織くん、全部全部"知ってる"彼らなんですよ。
そのように細部まで調整して調整して調整して、精緻に作り上げることの努力を思うと気が遠くなります。感謝しかない。わたしを一織くんに会わせてくれて、本当にありがとう。
②ライブ1本を丸々見せる構成になっている
ライブのライビュ(ややこしい…)を見たことがない人には中々イメージしにくいかもしれないですが、ライブのオープニングから様々な曲やMCを挟み、アンコールまでぶっ通しで見せる構成になっています。なので、例えば過去の回想やアイドルによるモノローグは一切ありません。つまり、彼らがどんな思いでその舞台に立っているかは、パフォーマンス以外に一切説明がないのです。
ゲーム内で"わたし"はマネージャーです。人気格差や引き抜き、幻となったデビュー曲、アイドルのプライベートな家族問題、捏造されたスキャンダル、誘拐事件…様々な困難を"裏側"の目線で追いかけます。色々起きるな…。そして、それらに直面し、悩み、傷つき、強くなっていくアイドルのことを好きになります。そっと仲間を支える信頼関係に、色んなものを背負って孤独に戦う姿に、胸が熱くなります。
でも、ここはステージ。そういった裏側を彼らは一切見せません。お客さんも知りません。シンプルに、ここに来てくれたお客さんを全力で楽しませようとする彼らがいます。歌って踊って、人を幸せにしたいという原始の欲求がここにあるのです。この瞬間を愛するからこそ、ストーリーで描かれた色んな困難を頑張って乗り越えてくれたんだなあと思うほど、彼らは楽しそうに、そして鮮烈に輝きます。アイドルじゃなかった世界線なんて信じられないくらい、ステージが誰よりも似合う16人。
「アイナナのストーリー知らないし、そういう文脈分からないからなあ…」「そもそも16人も見分けつかないよ…」と思った方もいるかもしれません。大丈夫です。具体的にどんな困難に直面しただとか、どう乗りきったとかはそりゃ描かれていませんが、パフォーマンスでちゃんと表現されているので、分かります。(以下、ほんの少しセトリのネタバレします)
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グループでの歌唱が3曲ずつあるのですが、最初2曲は「このグループがどんなグループか」「どんな困難を乗り越えてきたか」が示されています。そしてそれぞれの3曲目が「物語を経てどんなアイドルに成長したか」が示されています(…いるように、わたしは思いました)。なので1~2曲目を聞いてそれぞれのアイドルに対して抱いた印象から、3曲目で提示される四者四様のカッコ良さを楽しんでいただければと思います。その直後のとある曲は文脈が分かった上で歌詞をしっかり聞くとなんかもう…とにかく堪らないのですが、それはムビナナご覧になってからストーリーを履修しても後追いで面白いかと思うので、まずは上映中に映画館に行ってみてください!
③テーマが「森羅万象」
いや広くない?わたしも思いました。
でも見終わったあと、このテーマしか考えられなくなりました。アイドルを好きでいることって、森羅万象に感謝することなのですね…。詳しくは後述します。掲げたテーマが「森羅万象」なんだとだけ分かっていただければ大丈夫です。
なぜアイドルは歌って踊るのか
これを読んでくださっているほとんどの方はアイドルオタクの方だと思います(そういうタイトルをつけたので…)。なので、皆さんにお聞きしたい。なぜアイドルって歌って、踊るんでしょう。だって皆さんの好きなアイドル、全員が全員歌と踊りが得意なわけじゃないですよね。歌って踊る以外の時間…たとえばお芝居をしたり、握手会をしたり、YouTubeではしゃぐアイドルのこともわたしたちは好きですよね。スポーツ選手やお笑い芸人を推す人もいる中、なぜアイドルは歌って踊るのでしょう。
わたしはアイドルの1番の魅力を同時代性だと思っています。過去記事櫻井翔 未来への言葉展に行ってきたよの「自担と同時代を生きる」にも書きましたが、要は"自分の人生"という限りある時間の中で"君を見つけた"ことの奇跡って、眩しすぎて、わたしのこれまでの人生全部を肯定してくれるほどの輝きなんですよね。だから、アイドルと同じ時代を生きること、リアルタイムにアイドルの成長を見守れることってなんかもう「わたし、こんな瞬間を目撃できたなんて生まれてきて良かったなあ!」という人生の賛歌に繋がると思っています。森羅万象すべての奇跡への感謝です。そして、全国各地で全然違う人生を歩む人たちが「同じものが好き」という1点で共鳴して、この日この時間に同じ場所に集うライブって本当に奇跡で、なにかがちょっと違うだけで違う光景になってしまうくらい儚くて、いつか終わることが決まってる関係性だけど、当たり前じゃないから愛しいし、だからこそ尊いんだよなって思います。
そして、その同時代性を1番強烈に表現するのが、歌と踊りだと思っています。アイドルの"身体"と"時間"に強固に結びついていて、他の誰にも代替不可だから。だから、アイドルって歌って踊ってくれるんだと思うんです。余談ですが、こういうアイドル観なので、「(アイドルとして1番大切にしていることを)歌って踊って、その時間をシェアすること」だと語ってくれるSixTONESの田中樹くんをめちゃくちゃ"信頼"しています。
ムビナナ、MCが割と短いんですよ。歌って踊ることで全てを伝えに来ている。それは、彼らがアイドルだから。なのでこれまでのストーリーや文脈を分からなくても楽しめます。言うまでもないですが、ストーリーや文脈が分かると面白さが格段に上がる反面、眼球10個ほしい…!という欲求に耐えなければならなくなります。
「理想のアイドル」という虚構
わたしは和泉一織くんという1人のアイドルが好きですが、何より「アイドリッシュセブンという作品で描かれるアイドル観」に深く共感しています。たとえばこちら。アイドルグループTRIGGERのマネージャー 姉鷺カオルが、メンバーから「理想のアイドルってなんだと思いますか?」と聞かれた時の答えです。
決まってるじゃない。終わらないアイドルよ。アイドルは夢なの。夢の終わりなんて誰も見たくない。伝説なんて賞賛よりも、ある日突然姿を消したりしないアイドルの方がいい。日本一のトップスターじゃなくたって、顔に傷があったって、声が出なくたって、終わらせないでくれたらそれでいいのよ。だけどその夢を叶えるのが一番難しい。
(アイドリッシュセブン 3部14章2話)
分かりすぎませんか…
アイドルは偶像で、作り物で、人間が関わっていて、そしてそれを受容するわたしたちもまた人間だから、実はめちゃくちゃ不安定な存在なんですよね。そして、アイドリッシュセブンにおいて「終わらないアイドル」はあくまで「理想」であって、実際は有限の存在であるという前提がとても、とても深く根ざしています。2次元のコンテンツなのだから、サザエさん時空なのだから、永遠を謳っても良いじゃないですか。でもそうしない。だからこそ、アイドルの1番の魅力である"同じ時代を生きることの奇跡"に重みが出るからです。この姿勢がとても誠実で、わたしは好きです。
そしてもう1つ。わたし、諏訪部さんのこの呟きすごく好きなんですよ。
「一生応援します!」と手紙をくれていた人が、気づけば他の人推しになっていた…なんてのはザラにある事で(笑)だから「一生」という言葉には何の説得力も感じないのだけれど、その瞬間「永遠」を感じてくれた事が真実であるならば、そこにはとてつもない価値があると思うんですよね。
— 諏訪部順一 Junichi Suwabe (@MY_MURMUR) 2019年5月26日
アイナナのメインストーリーで繰り返し言及されるように、人間による作り物であるアイドルに「永遠」を求めるのは酷なんだけど、分かってるけど、それでもわたしたちはこの幸せな空間がこれからもずっと続けばいいなと願ってしまう。だけど。IDOLiSH7自体は永遠には続かないけれど、わたしたちがIDOLiSH7に触れている間に"永遠"を感じたら、やっぱりその瞬間だけは確かに永遠でいてくれるんだと思うんです。
ライブ中にも示唆されるように、彼らは嵐のあとの、雨上がりの"虹"です。いずれ消えてしまう儚くて美しい虹。でも、人間に永遠を求めてはいけないと理解することと、「この瞬間が永遠に続けばいいのにな」という願いを慈しむことは両立できると信じていたいです。だって「僕らはひとときの存在」だと歌いながら、時間も場所も全てを軽やかに超えて、仲間やライバルと共に旅する過程を見せることで、彼らがわたしをめちゃくちゃ幸せにしてくれたので。いつかアイドリッシュセブンが終わっても、いつかわたしの好きなものが変わっても、この記憶をわたしは"一生"大事にしていくので。
…そんな宝物をくれるアイドルって、やっぱり最高すぎる。わたし、アイドルオタクで良かった〜!なんかこういう「アイドルに出会えて良かった!」の気持ちをすごく高い純度で追経験することができます。アイドルオタクの方にこそ、この良さが伝わると思うのです…!少しでも気になったのならば、ぜひ劇場に行ってみてほしいです。
補足
Q1:Day1とDay2、見るならどっちがいい?
→個人的にはDay1がおすすめです。Day2は少し緊張感が緩んで(2日目なのでね…!)のびのびしたアイドルを見られるのが魅力なのですが、初見さんには中々伝わりきらないかもしれないので、どちらかと言えばDay1がおすすめです。
Q2:通常上映と応援上映どっちがいい?
→これは応援上映がおすすめです!別にペンラやグッズ持たずに行ってもいいと思うんです。(どうせみんなスクリーン夢中なので…)声出ししたりクラップしたりするのも楽しいですし、なにより推しの顔面ドアップにぶっ倒れていくオタクを見ながらの方が絶対面白いと思います。オタクもガンガン応援してどんどんぶっ倒れていきましょう!
Q3:登場人物分からないまま行ってもいい?
→大丈夫です。フェスみたいなもんで、とにかく彼らの音楽が気に入るかどうかだと思います。見分けがつかなくてもまずは行ってみてください。それにアイドルたちは16人いるのですが、16人を今から覚えるの結構大変だと思います。(今回衣装もみんな似てるんですよね…)
以下、4グループの見分けがつけば最低限大丈夫です!※画像はムビナナ公式HPより
IDOLiSH7…7人組。明るくてわちゃわちゃしてる。元気いっぱいなのにどこか儚い。
TRIGGER…3人組。気品と実力がすごい。一級品のエンターテイナー。
Re:vale…2人組。余裕を感じさせる絶対王者。ずっと距離感バグが起きてる。
ŹOOĻ…4人組。攻撃的なギャングスター。全員「俺を見ろ!」の引力が強すぎる。
Q4:ストーリー追いたい場合はどうしたらいい?
→アプリゲームで全て読めますが、手っ取り早いのはアニメです。アイナナはアニメの出来がま〜〜〜〜良いので自信を持っておすすめ出来ます。今だとdアニメストア、U-NEXT、Hulu、FODプレミアムなどで見られるそうです(違ったらごめんなさい…)。なおアニメはストーリーの途中までしか作られていないので、アニメを見ただけだと「ŹOOĻが分からん…」ってなってしまうかもしれません。そこはまあ、ムビナナご覧になってから追いかけましょう笑
みんな〜!お願いだからムビナナを見てくれ〜!夜空を流し込んだような衣装で軽やかに踊る一織くんがハチャメチャ綺麗なので全人類見てくれ〜〜〜〜!!!!←結局これが言いたかったブログ
マシュマロ置いておいておきます!ご覧になった方は感想をぜひもぐもぐさせてください!